2018年10月1日月曜日

拾い読み日記 62


 引っ越して、20日ほど経った。家が、ほとんどいつも、片付いている。片付いていると、日記を書こうという気が、あまり、起こらない。どうしてだろうか。ともかく、安心できる場所で、しずかな気持ちになれることが、しあわせだと思う。

 今朝は台風一過、朝6時の雲があまりにダイナミックで綺麗で、しばらくベランダに立ちつくしていた。空を泳ぐ、巨大なさかなのようだった。

 先日、思い切って水戸へ行って、内藤礼さんの展示をみたので、『祝福』という作品集を図書館で借りてきた。夕暮れどき、闇が町を覆いはじめるころ、ゆっくりと、作品とことばをたどった。それから、ベランダに出て、ふたつ、星をみつけた。ふたつの星と、じぶんが、三角形をなしている、と感じた。とても特別な、夜のはじめの時間を過ごした。

「花が。動物が。ひとが。はなればなれになって、動いている。かぎられた形をもって、その内部をみたしている。ぐんぐん歩く道。踊る空気のひろさ。聴こえるはなうた。布は風にふくらみ、やがて降りてくる。鳥は光のなかに円をえがきひるがえる。海に夜が。岩に雨が。雲に空が。土に闇が。口にしただけで、私はもうそのものに駆けよったようにうれしい。何もいえないときも、ただうつくしいといえた。」

 ここではときどき赤ん坊がはげしく泣く声が聞こえる。どこの家からかわからない。生命そのもののような声。そのつよさに、はっとする。