2010年8月24日火曜日

石の時間





鉱物Barへいってきました。 


企画されたフジイキョウコさんの、鉱物への愛と情熱とアソビゴコロの結晶ともいえる展示空間と、うつくしい「標本箱」の数々。これまで鉱物に興味を持ったことなどまるでなかったのに、不思議の国に迷いこんで魔法にかけられてしまったみたいに、帰ってからも鉱物のことがあたまから離れず、とりあえずなにか石に関する文章を拾い読みしよう、と澁澤龍彦「石の夢」(『胡桃の中の世界』河出文庫)をむさぼり読む。そのなかで「長崎の魚石」という古い話のことを知り、本棚から『日本の昔話』(柳田国男著・新潮文庫)を見つけ出して読み、さらにふと思い出して蜂飼耳さんの『空を引き寄せる石』(白水社)を。飛石をひょいひょい伝い歩くように本から本へ移っていって、そこでまたさまざまな石を知りました。突如「有り難い石」に変身させられた石、見出されて愛される石、いつしか表裏を与えられてしまった石。……


「硬い時間を重ねていく。そのことに引かれる。何十年、何百年後、一度は文鎮だった石たちが河原や野原に転がり、陽を浴びているところを想像するのは心愉しい。」(「空を引き寄せる石」)


重なっていく「硬い時間」を想像してみる。まだ人がいない過去のこと、人がいなくなった未来のこと、そして、そこにある(あった)はずの石のこと。そんなことを思いながらあかりを消して、でもしばらくは眠れませんでした。あたまの中のひっそりとした世界とは裏腹に、ツヅレサセコオロギの夜の音楽がにぎやかすぎたせいだと思います。


写真右は長沢暁さんの作品に螢石、左は昔のゼリー型に巻貝化石。いずれも鉱物Barで購入しました。



追伸 山から島が見えました。鳥海山にて